風の色、海の色、バルセロナ色

バルセロナからの気ままな風。
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狂うのは牛か人か
カタルーニャで闘牛がついに全面禁止となった。3年ほど前に禁止騒動が盛り上がり、一旦禁止になると言われながらも観光客用に生き延びた感があったが、再度の議決で賛成67、反対59、棄権5という際どい過半数原理で採決された。



そもそもカタラン人に闘牛への思い入れは少なく、闘牛もフラメンコも自分たちの文化ではないと思っている人が多い。だがこうもはっきりと賛成か反対かを問われた時に、その行為の残虐性と、そしてよく言われる芸術性とを天秤に掛けると、こういう数字になってしまうのかもしれない。むろんその芸術性だけではなく、観光都市であるバルセロナなどは経済面への配慮も働くのだが、これを「スペインの国民的祝祭」「国技」と呼ぶことには、カタラン人であればほとんどが反発するだろう事は難くない。それならそこから抜けさせて貰おうじゃない、って感じか。

暗い通路を抜けると光溢れる闘牛場、そこには死を祝祭へと変える群衆の歓喜の声。銛で打たれ槍で突かれ、死の舞を強制され、そして雄々しく死ぬ事を美とする群衆の歓声によって狂気へと導かれる牛。狂っているのは牛なのか?

いかにその身近く牛をかわすことができるかを競い、華麗に赤いムレータを翻し身を反らす。我が身の危険と背中合わせのダンスを踊り、見得を切る。延髄に深々と短剣を差し入れる妙技。時をかけて培われた精神性を伴う芸術だとしても、赤いムレータに狂うのは牛なのか、人なのか。

2007年の夏から国営放送のTV1が闘牛の生放送を取り扱わなくなったのも、国民の2/3が関心がないという数字が示す人気低迷度を反映してだが、イギリスでキツネ狩りが禁止となるなどの動物愛護運動の盛り上がりが後押しをしている。貴族の愉しみであるキツネ狩りをスポーツ文化と見るのか、鯨漁を食文化と見るのか、高い技術を伴い己の命をも賭けたマタドールの舞を無形文化財と見なすのか。

すべてのものに、光と影がある。ギリシャ神話の流れをくみ、古代ローマではクリスチャンの剣闘士と動物を戦わせる残虐なショウの流れを汲む闘牛が花開いたのは、12世紀のスペインだが、その闘牛に魅惑された芸術家は多い。ゴヤ、ピカソ、ダリ、ミロ…。




だが正直なところ、個人的には闘牛は残虐だし嫌い、必要性を感じないと思っている人が大半を占めるにしても、それを議決によって禁止してしまうことには抵抗を感じる人は少なくない。カタルーニャの詩人のギム・フェレールが「闘牛を禁止することは、ピカソやミロ、バルセロを禁止することと同じだ」という発言をしている。「例えばサッカーが嫌いだからと言って、私はサッカーを禁止しろとは云わないよ。見たくなければ見なければいい。問題は見たくないから禁止、と言うのでは表現の自由に制限を与えることになるだろう。それにカタラン文化でないから価値を認めない、というのは以前の独裁政権下のスペイン的な間違った考え方みたいじゃないか」という意見には賛同者が少なくない。かつてフランコ独裁政権によって、民族の踊りサルダーナを禁止されたことをチクリと皮肉ったところは、カタラン人には根深い恨み辛みがまだあるのだという事を垣間見せてくれる。

今回の禁止議決に対し、これは純粋に動物愛護精神からなのか、それともカタルーニャ文化ではないから除外するのか、そこのところの曖昧さが何となく気にかかる。動物愛護でならあらゆる狩猟は禁止されるはずだし、カタルーニャ文化でないからなら、バルセロナではフラメンコだって禁止になるかもしれない。これがカタラン主義の嫌な側面であり、砂糖衣の毒薬だったりするのは愉快ではない。



しかし、国技とされる闘牛興行の実況中継が廃止になったのに、毎年7月のサン・フェルミン祭が始まると国営放送のTV1が、牛の走り抜ける様を1週間ほどの祭りの期間中、毎朝実況中継するのは、はっきり言って納得できない。いかにヘミングウェイによって知られたスペイン三大祭りのひとつであろうが、所詮は一地方の祭りである。それが税金によって制作運営されているTV1で放映するというのは、納税者の一人としてはちょいとムカつく。あんなのを毎朝、朝食の時間帯に見て仕事に行くって、どういう神経なんだろうかと思ってしまう。当然ニュースの時間は後送りだ。所詮スペイン人にとって時事問題は、サッカーと祭りの前では影が薄いのね〜、とまぁ妙な納得をするんだけども。




| るな | スペイン事情 | 19:04 | comments(0) | trackbacks(0) | -









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