風の色、海の色、バルセロナ色

バルセロナからの気ままな風。
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ガス燈の灯り その2
さて、カレル橋も見たし、クリスマスの市を見学した後はチェコの人形劇を見に行くことに。寒い中ビールを飲んで寒さにやられた夫は、一足先にホテルへ。ここからは私と女友達とで見学に行くことにする。私は昔から人形浄瑠璃が大好きで、日本に帰る楽しみの一つは浄瑠璃をまったり見に行くことなのだが、チェコのドラマティックな人形劇も昔からTVでよく見ていたので、ぜひ本物を見てみたかった。国立マリオネット劇場は、え? というほどの小作りな劇場で、演目はモーツァルトの「ドン・ジョバンニ」のみ。マリオネットだから、舞台の上には操る手が見えるのだが、その手がやたら大きく見える。人形が交差し、時には別な操り手へと投げ渡され、大きく派手な動きが舞台で繰り広げられる。女たらしの男の話ではあるが、浄瑠璃のあの艶っぽさとは別な世界。セックスや死に関する概念が違うのだから当たり前だが。ドン・ジョバンニを地獄へと引きずり落とす石像を演じるのは人間だが、オペラ風なのでなかなかに良い。もう少し時間があれば、もうちょっとシュールなチェコ現代人形劇も見てみたかった。



面白かったのは、この黄金通り。天井に頭が閊えそうなほどの低い家並みは、かつて衛兵たちの住まいだったそうだが、何処かホビットの暮らしを彷彿とさせて興味深い。昔のトイレの仕組み(仕組みというほどのものではない、単に椅子付オマルだが)や、台所、小さいのに何故かやたらと背の高いベッドなど、ちょっと暮らしてみたい気にさせる。一人暮らしのおままごとのような空間。閉所恐怖症の気のある私は、すぐに閉塞感を抱いてしまうだろうけど。カフカも一時期暮らしていたというのだが、彼は閉塞感に囚われなかったのだろうか。



チェコはボヘミアン・グラスの国。切り子にしようか、エッチングカットにしようかと、美しいシャンパン・グラスを探す。本当は6個セットで欲しかったが、観光の途中で持ち歩くには重いので断念。後で買いに行けたらと思いつつも、時間がなくて戻れなかったのが残念だ。美しいグラスで飲むと、カバの美味しさもひときわなのに。

さて、お次はミッシャである。しかしここでは誰もミッシャ(フランス語読み)と言っても解らない。ムハというのがチェコ読みだそう。お城の中にあるカテドラルのステンドグラス、ムハ美術館、そして市民会館の天井画と、優美なムハを堪能。スラブ民族の歴史を描いた大作「スラブ叙事詩」が特別展として開催されているとかで、どちらにするか迷ったが、市内の他の建築も見て回りたいという夫の提案で、市民会館の見学コースに参加した。ムハ(ミッシャの方が馴染み深いが)とくれば、やはり日本の「明星」の表紙を思い出す(山川登美子記念館でも見た覚えがある)のだが、アールヌーボォの双翼のひとりと言っても良いだろう。ロートレックの退廃的な線とは異質な、どこか硬質なクリスタルのような美しさだ。



この天井画のある市民会館では、かつてオーストリア帝国領であったチェコという国の、豊饒さを垣間見る事が出来る。何より素晴らしいのはシャンデリアなどの照明のデザイン。チェコ・クリスタルの素晴らしい技術をいかんなく発揮した照明デザインは、アールデコの直線的スタイルにぴったりだ。照明の画集があれば欲しかったほど。生活を彩るという点において、照明というのは非常に重要な要素である。同じクリスタルでもイタリアのムラノ島の照明デザインより、うんと洗練されている気がする。また通風孔やカーテンなどの細部に至るまでデザインされており、イタリアの貴族趣味とはまた違った趣。やはりハプスブルグ家は偉大な帝国だった、という事か。



ぶらぶらと街歩きは続くのだが、プラハが建築的には驚くほど豊かなところであったことに、来てみてびっくり。アールヌーボォの次にはキュービズム建築。この「ブラック・マドンナ」という建物中にあるカフェ「オリエント」、なかなかに素敵な内装。何故かエッフェル塔を思い浮かべてしまった階段の、破綻的リズム。ここは明るいうちに来て細部をじっくり見たかった気がする。行き当たりばったり的すぎた感があるのだが、知り合いがいるという心安さからか下調べ不足だった感は否めない。まぁ、また来よう。今度は陽の長い季節がいいな。




これがダンシング・ビルだったっけ? フランク・ゲーリー設計。ゲーリーと言えばビルバオのグッゲンハイム美術館とか、ワインセーラーのホテルとか、お魚が跳ねてるとか。何でもダンシングしている感じのデザインだ。自由自在な曲線が構築物として出来上がるのは、数式の偉大さなのだろうか。現代建築は設計・構造計算・施工の三位一体、チームでないとできない形というのもあるんだろうけど。人が住む、日常を営む、そんなレベルの建物が、私は好きだ。




これはオフィス・ビル。だよね。いつもいつも思うのだが、このプラハの街にしても、東京にしても、バロックやアールヌーボォ、キュービズム建築(これはプラハだけだそう)に続く、こういった現代建築が100年を超えて鑑賞され続け、ある種の感動を与え続ける事が果たして出来るのだろうか? そういう意味では、私は保守的なのかも知れませんが。このアンバランスさ(室内は普通だったりして)は、ガウディの有機的アンバランスとは違い、不安定な気持ちを起こさせる。そういえばガウディのペドレラ(カサ・ミラ)も1910年頃に建てられたのだから、プラハのキュービズム建築とほぼ同時代だ。片やキューブ(立方体)、片や有機曲線。不思議。まぁ、ペドレラも醜悪、不気味と言われ借り手がなかなか見つからなかったそうだが、100年たてば世界遺産だものねぇ。

抒情的な街プラハを後にして、何故か私たちはそのままバルセロナ空港からバルサの試合を見にCamp Nouへ。日本から来ている友人の見たいもの、行きたいところリストを網羅するためにパズル的日程を組んだ結果、こういう脈絡のない旅の終わりとなったのだが、Camp Nouではメッシが担架で運ばれるという、前代未聞の光景に興奮。旅の叙情は吹っ飛んだのでありました。




チェコの民芸品わら細工によるスラブ的な、農婦の如く豊饒なマリアが抱く幼子キリストとともに。Merry Cristhmas! Felices Fiestas!


| るな | 旅にしあれば | 19:47 | comments(0) | trackbacks(0) | -









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